鍼灸師として開業したい!出張専門の鍼灸師開業ならシェアサロンがおすすめ

鍼灸師として、鍼灸院を開業するためのステップについて解説していきます。賃貸・自宅・出張と自分の開業スタイルに悩んでいる方へ、それぞれのメリットをまとめましたので開業準備前の参考にしてみてください。

鍼灸院の仕事

鍼灸院は、「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を用いて施術を行い、自然治癒力を高めて体の不調を整える施術所のことです。国家資格を持っている鍼灸師が施術を行い、資格がなければ施術をすることはできません。

鍼(はり)療法とは、症状や疾患に応じてツボに針で刺激を与える施術を指します。一方で灸(きゅう)療法は症状や疾患に合わせてツボや該当する皮膚の上に火のついたもぐさを温熱剤として使い、患部を温めて作用させる施術を指します。

鍼灸院は、肩や腰の痛み、しびれ、コリ、何らかの不調に対して改善するようにアプローチしていく場所です。ただし、医師ではないので直接的に保険診療を取り扱えるわけではありません。医師の診察を受けて、同意書にサインをしないと鍼灸院での保険治療はできない決まりになっています。

鍼灸院を開業するために必要な資格

鍼灸師になり、鍼灸院を開業するためには、どのような資格が必要なのでしょうか。ここでは鍼灸師の資格がどのようなものか、鍼灸師資格の合格率まで解説します。

はり師、きゅう師の資格

実は鍼灸師の資格は2つあり、それぞれ「はり師」「きゅう師」の国家資格が存在しています。しかしどちらも一緒に受験し資格を取得し、2つの施術を行っていく方が多いため合わせて「鍼灸師」と呼ぶようになりました。

そのため、鍼灸師になるには「はり師」「きゅう師」の2つの国家資格が必要になります。

鍼灸師養成学校へ通う必要がある

「はり師」「きゅう師」の国家試験を受験するには、鍼灸師の養成学校で3年のカリキュラムを受講し卒業した方が受験対象となります。

鍼灸師養成学校は4年制や3年制の短大、または専門学校など、厚生労働省が定めている鍼灸師養成課程を受講できる養成所のみ対象です。そのため、働きながら通えるように夜間でも通える専門学校もありますので、自分に合った学校を見つけましょう。

国家資格の合格率

「はり師」「きゅう師」の国家試験は、毎年2月後半に実地されています。2022年に実施された第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格率は以下の通りです。

・はり師

受験者数…3,982人

合格者数…2,956人

合格率…74.2%

・きゅう師

受験者数…3,892人

合格者数…2,963人

合格率…76.1%

全部で170問出題があり、1問1点として全体で102点以上が合格ラインとなっています。

開業タイプ

鍼灸院の開業スタイルは、大きく分けて3つパターンがあります。それぞれメリットとデメリットがありますので、自分の状況に適した開業スタイルを選びましょう。

賃貸物件での開業

賃貸物件での開業は、自分のコンセプトに沿った鍼灸院を作りやすいことがメリットだと言えます。コンセプトに沿った鍼灸院を作れるため、内装や外装の細かな箇所にこだわれるうえ、事業計画に沿った集客をしやすいのが魅力です。

デメリットは、まとまった開業資金が必要という点です。開業当初で集客が上手くいかない時期は、不安な日々を過ごすかもしれません。

自宅併設での開業

自宅併設での鍼灸院の開業は、開業費用を安く抑えられるのがメリットです。ただし保健所の規定で鍼灸院として開業するには、「通気性があり、照明の明るさが十分」「施術部屋は6.6㎡以上」などのさまざまな規定を満たすスペースであることが条件です。

デメリットとしては、自宅が知られてしまうためプライベートを分けられない、仕事のON/OFFが切り替えづらいといったデメリットもあります。

出張施術による開業(シェアサロンなどを利用)

鍼灸師の中には、鍼灸院に勤めず患者の自宅へ訪問して施術をする、出張専門の鍼灸師も多く働いています。出張施術は、鍼灸院としての施術所を自分で持たないため、開業費用が抑えられるのがメリットです。

また、鍼灸師が患者の自宅へ訪問して施術を行っても、保険診療が適用されます。保険診療扱いにするためには、医師の同意が必要とされており「療養費支給申請書」の提出が必要です。

ただし、訪問で移動にかかる費用や時間は場合によっては負担になるケースもあるでしょう。バランス考慮したうえで集客をしていく必要があります。

鍼灸院の開業費用

ここでは、鍼灸院を開業する際の開業費用について解説していきます。開業にかかる「初期費用」と「運用費用」はどれぐらい目安に用意すればいいのか参考にしてくださいね。

初期費用

鍼灸院を開業する際の初期費用は、最低でも300万と言われており平均では600万前後と言われています。借りたテナントの賃料やスタッフ人数などによって値段は大きく変わります。施術ベッドや備品はもちろん、宣伝広告費まで含めた金額です。

また、鍼灸院を開業するなら当面の運用費用も準備しておかなければいけません。運用費用が全く無いと想定外のトラブルに備えられずわずか数年で廃業という悲しい事態になってしまう可能性があります。

運用費用

開業してから6カ月程の運転資金は、開業前に事前に用意しておくのがおすすめです。開業してすぐに集客が上手くいく保証はありません。

安定した収入が見込めないうえに、万が一のトラブルが起こった際は資金が無ければ太刀打ちできなくなってしまう事態となります。さらに、精神的にも安心して経営に専念できますので、できるかぎり資金は残しておくのが良いでしょう。

賃貸物件か自宅開業で鍼灸院を開業する

ここでは賃貸物件と自宅開業、どちらかの方法で鍼灸院を開業する際のポイントについて詳しく解説します。何から手を付けたらよいのか悩んでいる方はチェックしてみましょう。

開業の流れ

実際に開業する際の手順について、ひとつひとつポイントをまとめました。

保健所に相談をする

鍼灸院を開業する地域で該当する保健所へ、鍼灸院を開業したい旨を相談しましょう。施術を行ううえで必須な設備や物件の内容をチェックしておく必要があります。

テナントや自宅リフォーム工事の着工前に、鍼灸院の開業が問題ないかどうか図面を保健所へ持参してください。

構造設備基準の規定を満たした物件を選ぶ

鍼灸院を開業するには、あらかじめ定められている保健所の基準を満たしている施術所でないといけません。そのため、事前に保健所に相談し既定のチェックを行いましょう。

賃貸で開業する場合は最初から保健所の規定通りに鍼灸院を作り上げることができますが、自宅で開業したい方の場合はリフォームが必要になってしまうケースもあります。

医療法や医師法に抵触していないか確認する

鍼灸院を開業する際は、鍼灸院の名前やメニューの名前が医療法や医師法に抵触していないかどうかをしっかりチェックしましょう。患者が病院や診療所と間違えてしまうような名前は使用できません。

備品と集客の準備

物件とその間取りが決まったら、さっそく備品と集客の準備を進めていきましょう。鍼灸院としてのコンセプトをしっかり決めておき、コンセプトに沿った備品を揃えていきましょう。

鍼灸院の準備がまだ不十分だとしても、物件が決まっているならどんどん集客活動も同時進行で行っていくのがおすすめです。いざ鍼灸院がオープンすれば、集客に費やせる時間が少なくなってしまうため、準備段階でなるべく多くの方に宣伝できるようにしておきましょう。

開業に必要な届け出・調査

スムーズにオープン作業を済ませるため、事前に構造設備基準のチェックや届け出に必要な書類の準備を滞りなく終わらせましょう。

施術所開設届を提出する

鍼灸院をオープンしたら、開設して10日以内に保健所へ施術所開設届を提出しましょう。必要な書類は以下の通りです。

・施術者の免許証の写し2部とその原本

・平面図2部(以下の内容を記入したもの)

・法人開設の場合、登記簿謄本2部(発行後6か月以内のもの、2部のうち1部はコピーでも可。)

・法人開設の場合、定款又は寄付行為の写し2部[NS2]

なお、この内容は東京都福祉保健局の内容になりますので、該当する自治体のものを参照してください。

現地確認調査を受ける

保健所へ施術所開設届を提出すると、数日後に保健所から規定に沿った施術所かどうかを判断するための立ち入り調査が行われます。

現調査ののち、届け出の内容と相違が無ければ開設届の副本が交付されます。

開業に必要なもの

あらためて、鍼灸院を開業するのに必要なものをチェックしていきましょう。

施術場所

施術場所は事業計画や経営コンセプトに合ったものはもちろん、構造設備基準を満たした物件を探しましょう。清潔であることはもちろん、換気設備や消毒機器が用意されており、既定の広さがあるなどのさまざまな条件をクリアした場所でなければいけません。

物件探しをする前に、開設希望エリアの自治体が定める構造設備基準をチェックしておきましょう。

施術に必要な備品

構造設備基準をもとに、必要な備品を準備していきましょう。待合席用の椅子や消毒設備、スリッパなど施術所を常に清潔にしておけるような細々とした備品まで用意する必要があります。

また、鍼(はり)は感染性の廃棄物であるため、フタつきのごみ箱も必須です。

PCや事務用品

日々の売り上げ管理や予約管理を円滑に行っていくためには、PCや事務用品の用意も欠かせません。電話やWi-Fiなどの契約も必要になるでしょう。

サイトや予約システム

鍼灸院の公式サイトを作成し、予約システムを利用して患者が予約しやすい導線を作ることが重要です。予約システムは有料のものがほとんどで、開業当初は費用を圧迫するかもしれません。

しかしネット経由なら施術中の予約電話も取る必要がなく、24時間予約可能で患者の予約機会を増やすことに繋がりますので最初のうちは賢く活用するのがおすすめです。

出張専門で鍼灸院を開業する

賃貸や自宅での開業ではなく、出張専門で施術を行っている鍼灸師も数多く存在します。開業資金に自信が無くても、すぐに始められるためおすすめですよ。出張専門の鍼灸師として開業するにはどのようなポイントに気をつければよいのかをご紹介します。

開業の流れと必要な届け出

出張専門の鍼灸師として開業する手順と、開業に必要な届け出について解説していきます。

利用するシェアサロンを探す

かつては患者の自宅に訪問するケースもほとんどでしたが、なかなか自宅に鍼灸師を招き入れるのは抵抗があるという方も多いものです。そこで、シェアサロンを利用する鍼灸師が急増しています。

月額契約でレンタルできるサロンや時間貸し、鍵付きロッカー完備などさまざまな特色のあるシェアサロンが増えています。自分のコンセプトに合ったシェアサロンを見つけてくださいね。

出張業務開始届を提出する

出張専門の鍼灸師は、鍼灸院開設の際の「開設届」ではなく、「出張業務開始届」を保健所へ提出します。すでに自分の鍼灸院があり施術の一環として出張業務を行う際は、出張業務開始届の提出は必要ありませんので、覚えておいてくださいね。

備品と集客の準備

出張先の環境がどのような状態でも対応できるように、備品はしっかりと準備しておく必要があります。出張先の環境の確認と、距離を確認して必要な荷物の量をあらかじめ決めておきましょう。

施術所を持たないで集客しなければいけないため、患者と連絡を取る専用のスマホがあると良いでしょう。ネット予約システムを利用すると、施術中でも電話に出なくても予約をとりこぼさないのでおすすめです。

また、決済はキャッシュレスにしておくと、お釣りの準備がいらないので便利ですよ。

出張専門の鍼灸院を開業する際の注意点

出張専門で鍼灸師として開業する際に、気を付けておきたいポイントをまとめました。出張専門で開業の際はぜひ参考にしてください。

広告を作る際の注意点

出張専門の鍼灸師として開業すると、鍼灸師個人として「出張業務開始届」と提出しているため、屋号のない状態になります。そのため鍼灸院の名前や通称名を名乗って広告を出すことができません。広告用のチラシや名刺などを作るときは注意しましょう。

また、移動にかかる費用や時間などは負担がかかりすぎないようなエリアまでに限定するのがおすすめです。予約を効率的に回せない可能性があることに加え、長い目で見ると体力的に厳しくなってくる可能性が高いです。長く働き続けるために、無理をして予約を詰めすぎないようにしてくださいね。

出張場所の制限について

自分の鍼灸院がすでに開設していて、サービスの一環で出張業務を行う鍼灸師の場合は片道16㎞圏内と定められています。許可されているのは、患者の住所から16㎞圏内に鍼灸院や施術所がなく、鍼灸師に出張できてもらうほかに方法がない時のみですので、覚えておきましょう。

まとめ

鍼灸師として鍼灸院を開業するには、賃貸を借りる、自宅で開業、出張専門で行うなどさまざまな方法で開業ができます。それぞれメリットとデメリットがあるため、自分の考えるコンセプトや事業計画に沿った方法を見つけていきましょう。

出張専門の鍼灸師としての開業は開業費用が安く抑えられるうえ、自分の生活スタイルに合わせて自由度の高い働き方ができるのでおすすめです。

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