セラピストとして開業すると、施術以外の業務が意外と多いことに気づきます。そのなかでも、確定申告はセラピストとして事業を経営する上で必須の業務です。今回は、セラピストの方向けに確定申告の方法について解説します。
セラピストは確定申告しないといけない?
そもそも、セラピストの確定申告は本当に必須なのでしょうか?ここでは開業セラピストに確定申告は必要なのかどうかについて、以下では、法人設立をせず、個人事業主として事業を開始するケースを想定して説明します。
個人事業主として開業したセラピストは確定申告が必須
個人事業主として収入を得ているのに確定申告をしなかった場合、本来納めるべきだった所得税を徴収されます。それに加えて「無申告加算税」が適用されて税額に応じた罰金を支払うことになりますので、確定申告は確実に準備しておきましょう。
国税庁:No.2024 確定申告を忘れたとき
セラピストを「副業」とする場合は?
主な収入源は別の仕事で得ている、いわゆる副業セラピストの方の場合はセラピストとしての所得が年間で20万円を超える場合のみ確定申告が必要です。収入の額面ではなく、経費などを差し引いた粗利が20万円を超えるかどうかがポイントになります。ただし、住民税の申告は必要なため忘れずに申告をしましょう。
セラピストが確定申告するメリット
確定申告は必須ですが、経営上のメリットもたくさんあります。
確定申告のメリット
独立・開業したセラピストが確定申告をすると得られるメリットは、以下の通りです。
・青色申告ができる
・事業の赤字を3年繰り越せる
・還付金を受け取れるケースがある
・所得証明書を発行できる
確定申告をするということは、「きちんと1年間収入を得て納税している」という状況を証明することになります。そのため、事業の赤字を国の規定に則り、翌年以降に繰り越したり、還付金を受け取ったりすることが可能です。住宅ローンを組む場合なども、収入の証明には確定申告をしていることが必須条件になります。
確定申告は2種類のパターンが存在する
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類が存在します。それぞれの違いを理解した上で、申告パターンを選択しましょう。
「青色申告」と「白色申告」の違い
青色申告は開業届を提出したうえで「青色申告申請書」の提出が必要な制度です。青色申告にすれば事業を継続するなかで、税制上の優遇措置を受けられるようになります。ただし複式簿記で帳簿をつける必要があり、売り上げや経費を細かく管理しなければいけません。
「青色申告承認申請書」を提出しないと、自動的に白色申告で行うことになります。白色申告は簡易帳簿で良いため、青色申告よりも帳簿つけが比較的簡単です。しかし青色申告のような税制での優遇措置はないので、青色申告がおすすめです。
青色申告の特典
青色申告は、以下のような特典があります。
・特別控除が最高65万円受けられる(e-TAX)
・収入証明ができる
・売り上げの赤字を翌年以降に繰り越せる
青色申告の大きなメリットは、65万円の特別控除があるということです。事業にかかった経費を控除できるため、収入から差し引いて税額を下げることができます。また、売り上げが赤字になってしまっても最長3年間赤字を繰り越すことも可能です。
ただし、青色申告特別控除の最大額65万円を受けるには、インターネットを利用した電子申告(e-Tax)による申告、および電子帳簿の保存が必要になります。税務署の窓口で申告書を提出する場合は、控除額が50万円になってしまうので電子申告(e-Tax)で申告できるように準備を進めておきましょう。
簡単に確定申告をするには
確定申告は慣れないとどうしても面倒な作業に思えてしまいますが、簡単に行うコツもあります。初めて確定申告する方はぜひ参考にしてください。
会計アプリ(freeeや弥生会計など)
会計アプリを使うことでクレジットカードや銀行口座も登録できるため、自動で経費の流れを記録しておくことが可能です。また、現金で支払った場合でも家計簿のように項目を入力するだけで、複式簿記のような形式に自動生成してくれますよ。わざわざ本で税金の勉強をしなくても、質問に答えるだけで確定申告ができるため、確定申告が初めての方にも大変おすすめです。
e-taxを使って確定申告をする
確定申告をするなら、ぜひe-tax(電子申告)で提出するのがおすすめです。混雑する提出窓口で並ぶ必要がないうえに、青色申告特別控除額が10万円も上がるため、やらない手はありません。窓口で確定申告書類を提出した場合は、特別控除額が最大65万円のところ、55万円になってしまうため、注意しましょう。
確定申告で必要になる準備
確定申告を行うまでには、日ごろから帳簿をつけたり経費を管理したりしなければいけません。確定申告を行うまでの必要な準備のポイントをまとめましたのでチェックしていきましょう。
開業届の提出
まずは開業届を税務署に提出し、事業の開始を知らせましょう。このタイミングで、一緒に「青色申告承認申請書」を提出するのがおすすめですよ。「青色申告承認申請書」の提出期限は、開業から2ヵ月以内とされていますが忘れないうちに出すことを考えて一緒に提出しましょう。
個人事業専用の口座を開設
サロン経営用の銀行口座を開設しておくと、売り上げの流れが把握しやすいためおすすめです。さらに、会計アプリを利用している場合はアプリに連携でき、帳簿が自動生成されて大変便利ですよ。
領収書の管理&整理
経費でかかった分の領収書はわからなくならないように、しっかりと管理しておきましょう。日頃から管理を行うことで、確定申告を手間書く速やかに終わらせることができます。
セラピストの売上項目の考え方
開業セラピストとして自分のサロンを経営していく中で、考えられる売り上げ項目を一覧にしてまとめました。帳簿をつけていくのに参考にしてみてくださいね。
1.施術料金
開業セラピストにとっては、売り上げのベースとなる項目です。クレジットカード決済だと、支払タイミングが遅れるため「売掛金」として計上します。また、クレジットカード決済による手数料なども忘れずに記載しましょう。
2.店舗で販売している商品の売上
サロンで商品を売る場合は、その商品の仕入れに伴って消費税を設定できます。これを「簡易課税制度」といい、簡易課税制度を適用する際は「事業区分」によって定められている事業のみなし仕入れ率を参考に消費税額を設定します。
そのため、店舗で販売するアロマオイルや店販商品の販売は、小売業の扱いとなるため業種区分が第2種事業となり、みなし仕入れ率は80%となります。
3.キャンセル料
お客様都合での当日キャンセル・無断キャンセルによって損失した予約のキャンセル料も、売り上げ項目に計上できます。キャンセル料は本来あったはずの売り上げに対する「補填金」のようなものなので、消費税の課税対象ではありません。
4.セミナーや勉強会を開催した場合
セミナーや勉強会を行った際に得た売り上げも項目にいれます。この場合は消費税の課税対象で、セミナーは業種区分がサービス業に分類され、第5種事業となり、みなし仕入れ率は50%です。
セラピストの経費項目の考え方
開業セラピストとして自分のサロンを経営していく中で、計上できる経費を一覧にしてまとめました。経費を管理していくのにぜひお役立てください。
1.施術に必要な備品の購入費用
施術に必要なタオル類や施術用ベッドなど、備品の購入費用は経費に計上できます。経費項目は「仕入れ」とし、代金をクレジット払いで後から支払いがある場合は貸方科目に「買掛金」を使うと良いでしょう。
2.店舗で使う消耗品
トリートメントやアロマテラピーなどに使われるアロマオイル、また店内設備のための電池やトイレットペーパーなどは「消耗品費」として計上します。また清潔な施術着やシーツ・リネン類を提供するためのクリーニング代は、「衛生費」としても良いでしょう。
3.施術者が使用するハンドクリームなど
オールハンド施術をウリにしているセラピストにとって、自分の手のセルフケアは施術に重要なポイントになりますよね。手荒れを防止するためのハンドクリームも「消耗品」として計上できます。
4.施術前後のお茶やお菓子代
カウンセリングや施術後にお客様へお出しするお菓子やお茶なども、「サービス費」として計上できます。
5.施術場所の賃料など
テナントを借りてサロン経営している場合は、計上項目が「地代家賃」となります。間借りなどの時間貸しであれば、「賃借料」として、テナントを借りた際とは区別するとわかりやすくするのをおすすめします。
また、専用のテナントを借りずに自宅でサロン開業する場合は、サロンとして使用している面積と時間の割合を計算して、経費計上が可能です。
6.施術用器材、PCやデスク
エステ用マシンや事務作業用のPC、デスクなどは消耗品とは違い長く使えるものです。計上項目には「器具備品」として資産にすることにより、数年に分けて経費にできます。これを「減価償却」といい、購入した物品の耐用年数によって分割する年数が定められています。
7.店舗雑貨やインテリア
店舗内にある装飾用の雑貨やインテリアなどは、1つが10万以下であれば「消耗品費」で計上しましょう。家具やベッド類などは10万円以上になるなら「減価償却」に該当するため、「器具備品」として計上します。
8.店舗の水道光熱費
サロンで使用する水道代やガス代、電気代などは「水道光熱費」とします。ただし、自宅サロンの場合は、自宅利用分の使用料は計上できません。家賃と同様にサロンで使用している割合を分割して計上しましょう。この考え方を家事按分(かじあんぶん)と呼びます。
家事按分は、業務に必要な経費かどうかが基準となるため、サロンスペースのコンセントの量や利用している時間にどれくらいの水道・ガス・電気代を使っているかを申告する必要があります。
9.店舗で使う通信費
サロンで使用している電話代やインターネット代も、「通信費」として計上します。自宅サロンの場合は、家賃や光熱費と同様に通信費もサロン使用分のみ計上できます。
10.WEB広告の掲載
GoogleなどのWeb広告や地元のフリーペーパーに掲載するための掲載料も、「広告宣伝費」として計上します。
11.チラシ、名刺などの作成・印刷費
チラシや名刺などを作成する際の作成費・印刷費は、宣伝するためのツールになるため「広告宣伝費」として計上します。
12.ホームページ作成やサイトのサーバー・ドメイン利用料
サロン宣伝を目的としたホームページ作成費は「広告宣伝費」として計上します。サイトのサーバーやドメインの使用料は、目的に合わせて「通信料」、「賃借料」を使い分けるのがおすすめです。
13.技術向上のためのセミナー参加費や教材
サロンを開業したとしても、技術向上の努力は欠かせないものです。新技術を習得するためのセミナー参加費や教材は、「図書研究費」や「研修費」として計上できます。
14.セラピストやマッサージ協会などの会費
セラピストやマッサージ協会などの会費についても、「諸会費」として計上が可能です。
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まとめ
雇われているうちは、セラピストとして技術に専念できていても個人事業主としてサロンを開業してしまうとそうはいかなくなってしまいますよね。確定申告は、サロン経営するなら誰しもが通る道です。
慣れない言葉ばかりでてきて混乱してしまうかもしれませんが、会計アプリや電子申告などを利用して、できる限りシンプルに済ませられるよう日々の準備をしていきましょう。
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